ヤマト運輸と日本郵政公社
郵政民営化を最優先課題とした第二次小泉内閣が発足した翌日の9月28日、ヤマト運輸(ヤマト)は日本郵政公社(郵政公社)の「ゆうパック」がローソンの取次店となったことに対し、独占禁止法上の不公正な取り引きとして、東京地裁に提訴した。
ヤマトが提訴したのは、民間企業が税金や配当金を支払っているのに、税金の優遇や信書の独占をしている郵政公社とは、公正な競争はできえない等というもの。
これに対し郵政公社は、宅配市場のシェア30%を越えるヤマトに対し、6%程度しかない「ゆうパック」は、ヤマトを圧迫するというレベルではなく、またユニバーサルサービスを義務づけられているため、大変なコスト高を強いられている等と主張。
10月3日付けの日経新聞によると、自社の効率改善が進まないヤマトが、高コスト体質に焦りを感じ、価格競争を恐れ提訴に至ったとの見方をしている。
本当にそうだとすれば、ヤマトに更なる奮起を促したい。過去数十年にわたり利用者のニーズに応えるため、規制や競合との戦いの末、今日を作り上げてきたように、再度初心に返り、守りではない、将来に向けて利用者に更にメリットのあるサービスを作り上げていって欲しいと思う。
時をほぼ同じくして、10月1日、NTTグループは固定電話の料金をこの12月から順次値下げすることを発表した。中でも基本料金の引き下げは1985年の民営化以来はじめてのことだという。
これは、ソフトバンクグループの日本テレコムやKDDIが、先に発表した固定電話基本料金の値下げ等に対抗するものだ。
競争があるところにしか、技術やサービスの向上は望めない。
ヤマトと郵政公社の場合と同様に、利用者にとっては、寡占化された業界から競争のある業界に変わることで、商品やサービスのコストを引き下げることができ、一般利用者や消費者のメリットにつながる。
そこで最大のポイントとなるのは、同じ土俵で「公平に競える」ということであり、その中で「利用者や消費者に支持された」企業が生き残っていけるといことだ。
今回のヤマトの提訴は、「公平に競える」という観点から見ると一理あるが、「利用者や消費者に支持される」という点では、一概に肯定できるものではない。価格だけではなく、サービスを含めたヤマトの今後の取り組み姿勢の真価が問われることになる。
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